今回は、ハラハラドキドキ『おすすめのミステリー小説』をご紹介していきます。
はじめに
謎解きからどんでん返しまで小説のジャンルの中でもミステリー小説はやっぱり面白い!探偵、恋愛、ホラー、ファンタジー、ハードボイルドなどテイストも豊富。名作から最新作品まで、最高に面白いミステリー小説を厳選して、あらすじや感想と合わせてご紹介していきたいと思います。
おすすめの『ミステリー小説』
- 掲載の順番はランキング形式ではありません、また作品は随時追加予定。
- 表記はタイトル・出版・作者・あらすじ・書評の順です。
碆霊の如き祀るもの
断崖に閉ざされた海辺の村に古くから伝わる、海の怪と山の怪の話。その伝説をたどるように起こる連続殺人事件。どこかつじつまが合わないもどかしさのなかで、刀城言耶がたどり着いた「解釈」とは……。( 原書房 より引用)
怪談をなぞらえたかのような連続殺人事件…岩礁に覆われ閉ざされた村に残る身の毛のよだつ4つの怪談とそこに伝わる儀式の謎解き。終盤で70項目もの手付かずの謎が列挙され一気に解決していく展開はもう圧巻です。そしてラストシーンの謎は刀城言耶シリーズ最強!その光景を想像するともの凄くゾッします!
火のないところに煙は
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の「私」は、かつての凄惨な体験を振り返る。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。「私」は、事件を小説として発表することで情報を集めようとするが―。予測不可能な展開とどんでん返しの波状攻撃にあなたも必ず騙される。一気読み不可避、寝不足必至!!読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!( 新潮社 より引用)
取材レポ風の短編小説。日常に潜むぞわぞわとするような薄気味の悪さ、ひたひたと迫ってくるような怖さの中で、語り部が起こった怪異を論理的に読み解こうとするミステリー要素も含まれた怪談話となっています。
書き方が実話なのかフィクションなのかわからないのが無性に怖くて、作者さんに確認したい程。もの凄く怖いのですが、その怖さがとんでもなく面白い!各章毎のラストにはゾクゾクと鳥肌が立ち、それがラストでとんでもなく…おすすめです。
黙過
移植手術、安楽死、動物愛護…「生命」の現場を舞台にしたミステリー。意識不明の患者が病室から消えた!?(『優先順位』)。なぜ父はパーキンソン病を演じているのか(『詐病』)。母豚の胎内から全ての子豚が消えた謎(『命の天秤』)。真面目な学術調査団が犯した罪(『不正疑惑』)。この手術は希望か、それとも絶望か―(『究極の選択』)(徳間書店 より引用)
読み終えた後もしばらく考え込んでしまうような、ズッシリとしたおすすめの医療ミステリー。臓器移植や安楽死など医療問題をテーマにした登場人物も舞台も全く違う4章の短編と思っていたら、第5章の究極の選択ですべての話が繋がり、解決したはずの4つの謎がまた違う側面を見せてくれます。これはかなりの驚き!一気読み必至の傑作です。
彼女は戻らない
彼/彼女らの人生は重なり、つながる。隠された“因果律”の鍵を握るのは、一体誰なのか―章を追うごとに出来事の“意味”が反転しながら結ばれていく。数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化した長編小説。(宝島社文庫 より引用)
雑誌編集社で勤める女性が 人気ブロガーに批判的なコメントを入れた事がきっかけで、自分の過去のブログを匿名掲示板に晒され、追い詰められて行く羽目に…匿名で誰かに悪意を向けることの怖さと軽い気持ちが人を追い詰める皮肉が描かれています。
お互いにエスカレートしてどうなることかと思っていたら、後半は震える程のどんでん返しの連続!しかも天地がひっくり返っても、前半の生活感あふれるサスペンスが台無しにならないところが凄い!とても怖くて、とても面白い作品でした。
虚像のアラベスク
創立十五周年記念公演を目前とした名門バレエ団に公演中止を要求する脅迫状が届いた。海外の要人が鑑賞を予定していることが判明し、海埜警部補が専従班として警護に当たることに。芸術知識と推理力で数々の事件を解決してきた甥の“芸術探偵”瞬一郎と通し稽古に向かうと、演目の『ドン・キホーテ』は危険なシーンばかり。万全の警備態勢を整えるが、海埜はある絶対的な不安の原因に気づいてしまった―。緊張の中、幕があがる!(「ドンキホーテ・アラベスク」)舞台で渦巻く疑念があなたを幻惑する書き下ろしミステリ中篇集。( KADOKAWA より引用)
中編2作と超短編1作からなる作品。1章では、バレエがテーマの優美なミステリを楽しんでいたのに、2章目の途中から雰囲気も様子もガラッと変わります。
読み終えた頃にはバレエの事は忘れてしまいそうな感じ。とにかく何も考えずに最初から順序通り読み切りましょう。一生懸命読めば読むほどその後とっても楽しめますよ!おすすめします!
祈りのカルテ
諏訪野良太は、純正会医科大学附属病院の研修医。初期臨床研修中で、内科、外科、小児科、産婦人科など、様々な科を回っている。ある夜、睡眠薬を大量にのんだ女性が救急搬送されてきた。その腕には、別れた夫の名前が火傷で刻まれていた。離婚して以来、睡眠薬の過剰摂取を繰り返しているという。しかし良太は、女性の態度に違和感を覚える。彼女はなぜ、毎月5日に退院できるよう入院するのか…。(「彼女が瞳を閉じる理由」)初期の胃がんの内視鏡手術を拒否する老人、循環器内科に入院中の我が侭な女優…。驚くほど個性に満ちた患者たちとその心の謎を、新米医師、良太はどう解き明かすのか。ふと気づけば泣いていた。連作医療ミステリ。( KADOKAWA より引用)
刺激は控えめで優しく緩やかに進むストーリーなので好みは分かれそうな連作短編医療ミステリー。
「人の心に寄り添い過ぎる」研修医・諏訪野良太が患者の病と心を看つつどこの科で医師として働いていくのかを決める過程にちりばめられたミステリー要素で、ぐいぐいと読ませます。根底にある人の優しさを「病気」を通じて紐解いていくようなお話です。
屍人荘の殺人
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!(東京創元社より引用)
このミス1位、文春ミステリー1位、そして、本屋大賞3位とデビュー作にして堂々の評価を受けてる本作品。夏合宿の夜、ありえないことが起こる…ミステリーの王道、クローズドサークルとホラーサスペンスの王道のアレを融合させた傑作です。
今までになかったクローズドサークルの展開に、本格ミステリーファンはのめり込むこと間違いありません。前半の明るくて楽しい展開からの、途中からは気味悪さや気持ち悪さはあるものの、文句なしに面白いですよ。
このミステリーがすごい!2018年版【国内編】ベスト10作品
名探偵は嘘をつかない
「ただいまより、本邦初の探偵弾劾裁判を開廷する!」彼が本当に嘘をついていないのか、それは死者を含めた関係者の証言によって、あきらかにされる!名探偵・阿久津透。その性格、傲岸不遜にして冷酷非情。妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。しかし、重大な疑惑が持ちあがった。それは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したというものだった――。(光文社より引用)
探偵の弾劾裁判を舞台に未解決事件の真相に迫っていく筆者デビュー作の本格ミステリー。語り口はライトで読みやすい作品です。
伏線を溜めに溜めて一気に真相を放出する『屍人荘の殺人』に対して、こちらの作品は一つの謎が明かされることで、事件の様相が一変し、また新たな謎が湧きあがるとても複雑な構成。これを見事に描ききり、トリックも満載で最後まで飽きさせませんでした。
アルバトロスは羽ばたかない
児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜は、仕事に追われながらも、学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。これは単なる「不慮の事故」なのか? だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。( 創元推理文庫 より引用)
児童養護施設が舞台の連作ミステリー『七つの海を照らす星』の続編。児童養護施設の保育士が謎解きをする春、夏、秋、晩秋の話と、その学園の生徒が通う高校で起きた冬の転落事故。
連作短編集という形式をとり、一話一話がミステリーとして完成度が高いのはもちろんのこと、物語全体を貫く事件の真相が明らかにされたときの、世界が覆されたような感覚といったら衝撃的です。こちらの作品、前作から順番に続けて読むことを強くおすすめします。
かがみの孤城
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 (ポプラ社より引用)
登場する子供たちと一緒に心を痛めたり、心温まったりできる素敵な一冊。各々登校拒否や家庭の事情で孤独を抱える中学生たちがあるお城に呼ばれることから始まります。
ファンタジーとミステリーが程良く織り混ざっていて、ラストに向かっては一気に伏線回収される心地の良い展開。最後の100ページくらいからは鳥肌がたちっぱなしでした。あらゆる世代の、居場所を無くしている人にとって、希望を与え味方になってくれるおすすめの作品です。
希望が死んだ夜に
14歳の女子中学生が、同級生を殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたけれど、動機は語らない。果たして真相は…。メフィスト賞作家が描く、社会派青春ミステリ。( 文藝春秋 より引用)
天祢さんの新境地とも言える社会派ミステリー。14歳の2人の少女。一人の少女が遺体で発見され、もう一人は「私が殺しました」と主張しますが、動機については口を閉ざす…2人に何があったのか?
ミステリー小説というジャンルを超えて、現在の日本が直面している社会問題に鋭く切り込んだ特に貧困問題について考えさせられる良作です。もちろんミステリーとしても一級品で、特に終盤のどんでん返しの連続技はお見事!
13・67
現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデェンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分。 (文藝春秋より引用)
大傑作との呼び声も高い香港を舞台にした全6編からなる本格ミステリ連作短編集『13・67』。読み始めると冒頭作の一捻りを効かせた安楽椅子探偵的な趣向にまず驚かされます。
その後も、香港の歴史や社会を背景にマフィア物や誘拐物、本格ミステリーらしく鮮やかな解決に至る面白さや、アクションもありとバラエティに富んでいます。しかもどの短編もそれだけで長編になり得るような秀逸さ。あらゆるミステリージャンルの垣根を越えた大傑作『13・67』についてはこちらで詳しくご紹介しています。
仮面の君に告ぐ
涌井和沙は、気がつくと病院のベッドにいた。戸惑ううちに、「モリさん、目が覚めたんですね」と看護師から声をかけられる。鏡をのぞいた和沙は驚愕する。そこに映っていたのは赤の他人―森千鶴だった。パニックになった和沙は、恋人の早田慎介を頼ろうとするも、彼は自分に気づいてくれない…。胸が押し潰される中、追い打ちをかけるように新たな事実が判明する。一年前、和沙は何者かに殺害されたというのだ。千鶴の弟・潤の力を借り、少しずつ事態を把握していく和沙だったが、慎介が不穏な動きを見せ始め…。カップルに訪れた奇跡の十日間。真相に思わず“震える”再読必至のミステリー!( 講談社 より引用)
どんでん返しとはまた違ったラスト…殺された女性の意識が、一年後に昏睡状態から目覚めた別の女性の肉体に宿りかつての婚約者に会いに行くというファンタジーミステリー。
婚約者に近づくもなかなか彼に真相を告げられない女性と、彼女を殺した犯人への復讐を目論む婚約者という二つの視点で交互に物語が進みます。そして!このラストは賛否分かれる気がします…。
海よ、やすらかに
湘南の海岸に打ち上げられた大量の白ギスの屍骸。原因を明らかにするため、藤沢市はハワイから1人の海洋研究員を招聘する。彼女の持つ“魚類保護官”という肩書きに群がるマスコミたち。それにまったく動じない浩美は、調査を開始するものの、嫌がらせの手紙が届いたり、夜中に襲われたりと、執拗な妨害に遭う。真相を追い求めた先に見えてきたものは…。魚の大量死に隠された、謎と陰謀を暴く!著者渾身の海洋ミステリ。(角川文庫より引用)
環境問題をベースにした、本格海洋ミステリー。魚の大量死、自然によるものか、環境汚染であってもそれが故意によるものか、それとも悪意によるものか…。
故郷の海を守るため、ハワイの海洋生物研究所で働く浩美は日本へと戻ってきて行政とは別に独自の切り口から「真相」に迫っていきます。結末は怖く、こんなことが現実の世界でもいつかは起こるかも知れないと感じました。サラリと読みやすいので是非読んでみて下さい。
わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
全人類がウイルスに侵され、死ねば誰もが活性化遺体になる世界。家畜ゾンビが施設で管理され、野良ゾンビが徘徊する日常のなか、とある細胞活性化研究者が、密室の中で突然ゾンビ化してしまう。彼はいつ死んだのか?どうやってゾンビになったのか?生者と死者の境目はどこだったのか?騒然とする現場にあらわれたのは、謎の探偵・八つ頭瑠璃。彼女とともに、物語は衝撃の真相が待ち受けるラストへと加速していく。世界もキャラクターもトリックも真相も予測不可!極上のゾンビ×ミステリー、開幕。(一迅社より引用)
死んだ人間が活性化遺体になる世界で起こる殺人事件に女探偵が挑むミステリー。設定の奇抜さを除けば結構王道な作品でした。
作中の描写はゾンビ物なのでそこそこグロめで全然爽やかじゃないんですがコミカルな文章に中和されていて読みやすいですし、後味もとても良い作品です。
ホワイトラビット
楽しさを追求したら、こういう小説になりました。最新書き下ろし長編は、予測不能の籠城ミステリーです! 仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。(新潮社より引用)
立てこもり事件と誘拐事件とが複雑に絡み合った話。相変わらず素敵な伊坂ワールドです。序盤は、時系列が前後したり最初から登場人物が次々と出て来て追いかけるのが大変ではあるものの、作者目線で語られる会話中心の物語で案外サクサクと読めます。
そして途中からは、怒涛の展開!主要人物の殆どが法を犯しているのですが徹底的に悪い人だけ滅びる爽快感も最高!ワクワク・ニマニマの止まらない傑作です。
Y駅発深夜バス
運行しているはずのない深夜バスに乗った男は、摩訶不思議な光景に遭遇した―奇妙な謎とその鮮やかな解決を描く表題作、女子中学生の淡い恋と不安の日々が意外な展開を辿る「猫矢来」、“読者への挑戦”を付したストレートな犯人当て「ミッシング・リング」、怪奇小説と謎解きを融合させた圧巻の一編「九人病」、アリバイ・トリックを用意して殺人を実行したミステリ作家の涙ぐましい奮闘劇「特急富士」。(東京創元社より引用)
軽く読める5話の短編集。でも、中身は粒揃い!怪奇系、読者への挑戦状、学園もの、倒叙もの、アリバイものなど幅広いジャンルで、本格ミステリー的なしっかりとした推理が土台にある作品が揃っています。
作者さんは、本当にミステリーに深い愛情を抱いているのだなと感じさせる作品揃いで、個人的には時刻表にない深夜バスに乗った主人公の体験した不気味な話『Y駅発深夜バス』と、手足が取れる謎の奇病を描いた『九人病』の怪奇系2作が特にお気に入りです。
盤上の向日葵
埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは―!?(中央公論新社より引用)
将棋を絡めて、人間模様を描くミステリー。時価600万円は下らない初代菊水月の将棋駒と共に埋められた遺体の遺棄事件を追う刑事と異例の天才棋士の幼少期、2つの時間軸を交互に描きどう交わるのかを楽しむ作品。
将棋に関してほとんど素人の私でも盤上に命を賭ける真剣師の戦いに高揚し、棋譜なんか分からなくてもドキドキ。そして段々と犯人に近付いていく感覚にワクワク。最後まで凄く楽しめましたし、題名の意味の切なさも心に残る作品でした。エンディングはまるで映画の様で味がありましたよ!
護られなかった者たちへ
仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。(NHK出版より引用)
刑務所出所者の社会復帰の難しさ、東北震災復興現場の現実など貧困問題を絡めながら描くミステリー。
法律の矛盾を突いて、その先に起きた哀しい犯罪で、私たちに世の不条理を訴える作品。とても重いテーマですが読みやすく一気読み。メッセージの深さと重さに加えて、最後に放たれる真実には言葉を失いました。
崩れる脳を抱きしめて
広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を通わせていく。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く――。彼女はなぜ死んだのか? 幻だったのか? ユカリの足跡を追い、碓氷は横浜山手を彷徨う。そして、明かされる衝撃の真実!?( 実業之日本社 より引用)
父親に捨てられ借金を背負い、金の亡者となった研修医の主人公と、脳腫瘍で余命短い資産家の患者との物語。心に傷を持つ2人がお互いの傷を癒す為、謎解きをして距離を縮めていくのですが…。
温かい雰囲気でちょっと切ない展開の前半、それが後半に入ってからは、ミステリー要素満載で2転3転の展開となりとても楽しめました。私も本の帯に書いてある通り、しっかり3回騙されました!謎を解いていきながら心も温かくなる素敵な作品ですよ。
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神の値段
マスコミはおろか関係者すら姿を知らない現代芸術家、川田無名。ある日、唯一無名の正体を知り、世界中で評価される彼の作品を発表してきた画廊経営者の唯子が何者かに殺されてしまう。犯人もわからず、無名の居所も知らない唯子のアシスタントの佐和子は、六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか―。( 宝島社文庫 より引用)
「このミス大賞」受賞、謎多き芸術家の絵と、それに魅せられた人達を描く芸術ミステリー。メディアどころか関係者の前にすら姿を表さない有名人気画家「川田無名」の専属画廊で働く主人公が、上司である画廊オーナーの殺された事件の手がかりを辿っていく物語。
美術市場の表と裏の世界も描かれていて、絵とは無縁な私でもどこかハラハラドキドキさせられました。ラスト直前まで謎が明かされないまま終わるのではという不安もよぎりましたが、怒涛の謎解きでフィニッシュ。一気に読んでしまいますよ!
風神の手
彼/彼女らの人生は重なり、つながる。隠された“因果律”の鍵を握るのは、一体誰なのか―章を追うごとに出来事の“意味”が反転しながら結ばれていく。数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化した長編小説。( 朝日新聞出版 より引用)
1つの嘘が未来の誰かの運命を変え得ることがある。遺影写真専門の写真館を舞台に数十年にわたる過去と現在の物語。 写真館で見つけた1人のお年寄りの遺影写真から話は広がっていきます。本作では、もちろんミステリー要素はあるのですが、人の内面や心の動きに重きが置かれています。
ほんの少しの繋がりが、奇跡のように絡み合っていく連作短編集となっていて、各短編にさり気なく配された伏線が、最後に巧に回収され1つの物語となる時の爽快感とホッと温かい感覚はとても心地好くて余韻の残る作品でした。
未必のマクベス
IT企業Jプロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、帰国の途上、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説。( ハヤカワ文庫JA より引用)
エリートサラリーマンが海外赴任先で企業の陰謀に巻き込まれる話。企業、殺人、裏社会、恋愛、紀行小説と入り乱れていてかなり難解、さらに600ページという厚さに圧倒されながらも、語り口は穏やかでむしろ読みやすい。 読み始めるとぐいぐい引き込まれる傑作です。マクベスを知らなくても楽しめますよ。
ラプラスの魔女
ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2か月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。( 角川文庫 より引用)
未来を予測できる能力を身につけた少年と少女のお話。テーマは『脳』。序盤に色々な人たちの視点が行き交い徐々に話が見えてくると一気に盛り上がり目が離せなくなりました。
人智を越えた力の話なので普通のミステリー小説とは一味違います。また、ラプラスの悪魔という有名な理論を下敷きに書かれていて、少し難しいところもありますがそこはさすがの東野圭吾さん、グイグイ引き込まれて一気に読み終えましたよ!
マツリカ・マトリョシカ
校内にある「開かずの扉」で事件が発生!現場は密室の上、過去にも似たような事件が起きていて…二つの謎を、マツリカさんはどう解く!?男子高校生・柴山と、廃墟に住む妖艶な美女が織り成す、青春学園ミステリ!!(KADOKAWAより引用)
マツリカシリーズ3作目。今作は死体こそ出てこないものの、密室、アリバイ、過去の事件とミステリーのお約束がふんだんに盛り込まれ、これまでのシリーズの中で最も本格ミステリー度が高い印象を受けました。密室の美術室で起きた事件、そして過去の出来事をめぐるもう一つの謎…。過去と現在のダブル密室モノとしてトリック、ロジックを楽しめました。マツリカさんの出番は少なめな気がしましたが、最後はシリーズとして驚きのシーンが!
狩人の悪夢
人気ホラー作家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタントが住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、右手首のない女性の死体が発見されて…。臨床犯罪学者・火村と、相棒のミステリ作家・アリスが、悪夢のような事件の謎を解き明かす!(KADOKAWAより引用)
25年も続く安定の火村・アリスシリーズ長編。今回のテーマは悪夢、ベストセラー作家の近くでおこった殺人事件に火村とアリスが挑みます。手首の切り取られた遺体、夜な夜な徘徊する夢遊病者、必ず悪夢を見ると云われている部屋…怪奇ムードの漂う設定、凄惨な事件を扱っているのに読後は柔らかい気持ちになる一冊。シリアスな現場でのところどころにある火村とアリスの小ボケにも癒されます!派手さや意外さは少ないですが、安心して読めるミステリー。とはいえ、最後の章で全部明らかになる爽快感は最高ですよ!
絶叫
マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ…。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。(光文社文庫より引用)
保険金殺人や貧困ビジネスなど、様々な社会の暗部と、絵に書いたような一人の女性の転落劇を気持ちいいほどに絡ませた壮絶なストーリー。ラストは題名通りの『絶叫』したくなる衝撃!!壮絶なのに爽快という複雑な読後感の一冊です。
ジェリーフィッシュは凍らない
特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船“ジェリーフィッシュ”。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー六人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が…。(東京創元社より引用)
くらげの形の飛行船が舞台、断崖絶壁雪山に不時着し、全乗組員6人全てが他殺体で発見されます。なんとなく犯人が予想できるものの、それを裏切られ、最後の方でまた裏切られました。そして、理系苦手なマリア警部のコミカルなキャラクターがとてもいい味を出しています。楽しめる要素が沢山有りましたよ!
ブルーローズは眠らない
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、“ジェリーフィッシュ”事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査してほしいという依頼を受ける。ところが両者との面談の後、旋錠された温室内で切断された首が発見される。扉には血文字が書かれ、バラの蔓が壁と窓を覆った堅固な密室状態の温室には、縛られた生存者が残されていた。(東京創元社より引用)
『ジェリーフィッシュは凍らない』のマリアと漣のシリーズ2作目で前作同様、特殊な舞台に本格ミステリのガジェットを詰め込んだ作品。こちらも面白い!不可能と言われた青いバラを作り出した2人の人物を捜査するマリアと漣。2人を面談した後、温室で切断した首が発見されます…。青いバラのギミックとしての使い方や、蔦に覆われた密室のトリックは巧みで雰囲気にあっていて美しい!読み応えのある本格ミステリーです。
体育館の殺人
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に―。(創元推理文庫より引用)
学校に住んでいるオタク探偵が謎を解決する裏染シリーズ1作目。高校の体育館という舞台で繰り広げられる殺人劇。その謎を解くのは部室に住み着く天才で変人。状況証拠を積み上げて犯人をあぶり出す過程は読んでいてとても面白い!軽いノリの学園ものの体裁をとっていても、中身は本格的な謎が仕掛けられている良作で、ミステリ初心者の人もガチ勢の人も楽しめます。こちらの作品は(2017.9.10現在)Kindle Unlimitedでも配信されています。
Kindle Unlimitedは『月額980円で本と漫画が読み放題』になるサービスです。その数なんと16万冊以上!
現在、初回利用の方に限り30日間無料体験が出来るので、紹介している小説の中で、気になる作品がKindle Unlimitedで配信されていたら、是非お試しください!
王とサーカス
二〇〇一年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。「この男は、わたしのために殺されたのか?あるいは―」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。(東京創元社より引用)
かつてネパールで起こった王族殺人事件を題材に、偶然ネパールに居合わせたジャーナリスト太刀洗万智を主人公に描かれたミステリー。事件の真相も伏線の回収も見事、全然気にしないで読み飛ばしていた小さな変化がことごとく謎の解決に繋がります。そして単なるミステリーに留まらず、ジャーナリズムについても考えさせられる作品、王とサーカスという題名の意味がわかったときはすこしぞっとしました。
マリアビートル
幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。 (角川文庫より引用)
凄腕の殺し屋、復讐者、運び屋やサイコパスな中学生…物騒な人間がわんさか出てきて一個のトランクを巡って新幹線の中で駆け引きを繰り広げる物語。殺人事件が起こるのにすごく楽しくて面白い作品です!これだけでももちろん楽しめますが、前作の『グラスホッパー』読んでいると更に面白いですよ。
槐(エンジュ)
弓原公一が部長を務める水楢中学校野外活動部は、夏休み恒例のキャンプに出かけた。しかしその夜、キャンプ場は武装した半グレ集団・関帝連合に占拠されてしまう。彼らの狙いは場内のどこかに隠された四十億円―振り込め詐欺で騙し取ったものだ。関帝連合内部の派閥争いもあり、現金回収を急ぐリーダー・溝淵はキャンプ場の宿泊客を皆殺しにし、公一たちは囚われの身に…。そのとき、何者かが関帝連合に逆襲を始めた!圧倒的不利な状況で、罪なき少年少女は生き残ることができるのか!?(光文社文庫より引用)
バイオレンスサスペンス?振り込め詐欺集団をチートな戦闘力を持った主人公が一方的に虐殺してゆくスリリングで痛快爽快な作品。漫画かな?絶対にあり得ないのに無茶苦茶面白いです。
怒り
若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。そして事件から一年後の夏―。房総の港町で働く槇洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。(中公文庫より引用)
いきなり若い夫婦が惨殺されるところから始まる物語、千葉、東京、沖縄、3組の訳ありの悲しい話が同時に進みます。どの怒りが本当の『怒り』に繋がるのか気になり、どんどん読み進められます!
チルドレン
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。(講談社文庫より引用)
根拠のない自信を持って生きる不思議な男、『陣内』のまわりで起こる事件の短編集。どの物語も共通した登場人物で話は繋がっています。陣内ではない他の誰かが主観になっているのですが、誰から見ても彼はかなり魅力的な人、前向きに生きていこうという気にさせてくれる一冊です。
追憶の夜想曲
少年時代に凶悪事件を犯し、弁護は素性の悪い金持ち専門、懲戒請求が後を絶たない不良弁護士・御子柴。彼は誰も見向きもしない、身勝手な主婦の夫殺し控訴審の弁護を奪い取る。御子柴が金目のない事件に関わる目的とは?因縁の検事・岬恭平との対決は逆転に次ぐ逆転。法廷ミステリーの最先端を行く衝撃作。(講談社文庫より引用)
いつも資産家を弁護する御子柴礼二。今回もお金にならない旦那殺しの弁護を他の弁護士から奪ってまで弁護をします、その理由は…。法廷ミステリーと言われると難しい感じがしますがすごく分かりやすくて読みやすい!真犯人は想像の範囲だったのですが、その斜め上をいく驚きの展開に唖然!面白いですよ。
青の炎
櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。(角川文庫より引用)
大切な家族を守るために完全犯罪について色々と考えて実行する…犯人の強い意志や殺した後の恐怖などの心理描写が凄い倒叙ミステリ、最後まで救いがなくとても切なくなる作品です。江ノ島に行くとこの本を思い出しそう。
夜よ鼠たちのために
脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか…?深い情念と、超絶技巧。意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。(宝島社文庫より引用)
分かりやすい言葉で書いてあるのに、ゆっくり読み直したくなるような不思議なトリックばかりを集めた素敵すぎる9つの短編集、復刊希望も頷けます。最初の『二つの顔』で思いっきり引き込まれ、次の『過去からの声』に強い衝撃を受けこのトリッキーな仕掛けにどんどんハマってしまいます。謎解きに加えて文章でも魅せてくれる本当に面白い一冊!おすすめです。
折れた竜骨
ロンドンから出帆し、北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナは、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた…。(東京創元社より引用)
魔法が使える世界が舞台のミステリー、孤島での殺人、謎の密室、個性的な容疑者たち…そこにワクワクするようなファンタジー要素が見事に絡まっていて面白い!RPG好きにはたまらない作品だと思います。
ナオミとカナコ
ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。(幻冬舎より引用)
DV夫を計画的に殺害する妻と友人、何とか二人逃げ切ってと思わず応援してしまうようなストーリー。心理描写もジェットコースターのようなスピード感!追い詰められていくシーンにはたまらなくハラハラします。それにしても奥田さんの文章はいつも綺麗で洗練されていて読みやすいですね。
殺人鬼フジコの衝動
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた11歳の少女。だが、彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?最後の1ページがもたらす衝撃に話題騒然。(徳間文庫より引用)
幸せを求め続ける女、フジコの悲惨な半生を描いたお話。全体的に絶望感が漂っています。 終盤で見事に序盤のストーリーと繋がり一気に読んでしまいました。騙されまいと身構えて読んだのに、まんまと騙されてしまいました。
向日葵の咲かない夏
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。(新潮文庫より引用)
好き嫌いが別れると思いますがファンタジーとミステリーとちょっとグロな作品、清々しいまでに異常な人しか出てきません。前情報無しに読むのがおすすめで、最後まで驚きの連続でした!ちなみに私は好きです。
テミスの剣
豪雨の夜の不動産業者殺し。強引な取調べで自白した青年は死刑判決を受け、自殺を遂げた。だが5年後、刑事・渡瀬は真犯人がいたことを知る。隠蔽を図る警察組織の妨害の中、渡瀬はひとり事件を追うが、最後に待ち受ける真相は予想を超えるものだった!どんでん返しの帝王が司法の闇に挑む渾身の驚愕ミステリ。(文春文庫より引用)
冤罪問題を正面から扱った社会派ミステリー。強引な取り調べで生まれてしまった冤罪事件の始まりから終わりまでが『渡瀬警部』の目線で表現されてます重いテーマを扱っていますが、テンポも良くて読みやすく、どんでん返しもあってかなり面白い作品です!
さよなら神様
隣の小学校の先生が殺された。容疑者のひとりが担任の美旗先生と知った俺、桑町淳は、クラスメイトの鈴木太郎に真犯人は誰かと尋ねてみた。殺人犯の名前を小学生に聞くなんてと思うかもしれないが、鈴木の情報は絶対に正しい。鈴木は神様なのだから―(「少年探偵団と神様」)。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させた神様探偵が帰ってきた。(文春文庫より引用)
冒頭で毎回犯人が『神様』によって名指しされるところから始まる異色のミステリーで、いかに犯行が可能だったかと小学生の探偵団が推理していくお話。短編集ですけど全て苦味の残るものばかりです。それから小学生のくせに恋愛がドロドロしすぎ!
僕の光輝く世界
気弱なオタク男子、光輝は進学先の高校でもいじめられ、あげくに橋から突き落とされる。搬送先の病院で絶世の美少女と運命の出会いを遂げた、と思いきや、実は既に失明してしまっていた。美少女は果たして妄想なのか実在なのか…視覚を失った少年が、想像力を駆使して奇妙な謎と格闘する不思議ミステリー。(講談社文庫より引用)
主人公がSFチックな障害を持っている特殊設定ですがサクッと読めるミステリー。ほんとは相当胸糞の登場人物達も、文体がライトなので許せる感じになっています。いじめや障害を扱いながらも前向きな物語が好印象な作品。
黒龍荘の惨劇
山縣有朋の別邸・黒龍荘に、山縣の影の金庫番・漆原安之丞に対して恨みを晴らす、という脅迫文が届き、数日後、漆原は謎の死をとげた。調査依頼を受けた「月輪萬相談所」の探偵・月輪は、かつて伊藤博文邸でともに書生として過ごした杉山を連れて黒龍荘に住み込むことに。広大なお邸には四人の妾を含む住人七人と使用人たちが暮らしていたが、警察と月輪たちの監視をあざ笑うかのごとく、彼らは次々と遺体となって発見されていく―史上屈指の残虐事件の裏には、国家をも揺るがしかねないおそるべき謀略があった!!(光文社文庫より引用)
明治期のある良家で発生した不気味なわらべ唄に見立てられた連続殺人事件のお話。物語全体の90%まで差し掛かっても、まだ連続殺人の続く大盤振る舞い、最終章で一気に怒涛の伏線回収はお見事の一言です。
冷たい太陽
「子供を預かった」高村家に突如もたらされた誘拐犯からの凶報。身代金は五千万。父親の謙二は、倒産の危機に瀕する自社の専務や、前妻にも頼むなど金策に奔走。警察も介入し、事態はさらなる混乱の渦に呑み込まれていく。捜査線上に浮かぶ無数の容疑者の中で、人々を翻弄するのは誰だ!?(光文社文庫より引用)
誘拐事件を扱った作品集。ある一つの『騙し』のために全体が組み立てられてるのがいい。展開もスピーディなので、あっさり読めてあっさり騙されるといった感じで楽しい!
死と砂時計
死刑執行前夜に密室で殺された囚人、満月の夜を選んで脱獄を決行した囚人、自ら埋めた死体を掘り返して解体する囚人―世界各国から集められた死刑囚を収容する特殊な監獄で次々に起きる不可思議な犯罪。外界から隔絶された監獄内の事件を、老囚シュルツと助手の青年アランが解き明かす。(東京創元社より引用)
終末監獄という囲われた世界の中で起こる事件を解くミステリー、それぞれは独立した短編ですが、最後は繋がった物語になっています。舞台が監獄ということもあり、なかなか事件が気持ち悪いです。最後の一文には思わず『そっちかいっ!』
模倣の殺意
七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。(東京創元社より引用)
ある男が自殺をしてその真相を別々の男女が調べていくお話。驚くことに書かれたのは昭和46年、今でこそトリック作品が数多くありますが、その先駆けでしかもこの完成度となると傑作としか言いようがありません!真犯人が判明したときには背筋がスッと冷たくなるような感覚がありました。
儚い羊たちの祝宴
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。(新潮文庫より引用)
米澤穂信さんの作品をもう一つ、ゾクッとする上流階級のお屋敷が舞台の短編集、怖いのが好きな方にはお薦めの一冊です。知性的な語り口で、残酷で悲しく背筋が凍る結末が導かれるのがゾッとしましたが、あまりに華麗で癖になります。
放課後に死者は戻る
病院で目が覚めると、冴えないオタクだった僕の見た目は、イケメンの姿に変わっていた。そうだ、教室の机に入れられた手紙で呼び出され、僕は誰かに崖から突き落とされたのだった…… 助けに入ったイケメンと一緒に。 退院した僕は、元いたクラスに転校生として潜入した。
一体、誰が僕を殺したのか? 僕は、僕を殺したクラスメイト探しを始める――。切なさと驚きに満ちたラストが待ち受ける、傑作長編ミステリー。(双葉社より引用)
他人と体が入れ替わった少年が主人公の物語。ストーリーはとても読みやすくて分かりやすい上に、設定もとても面白かったです。ある程度オチは予想できると思ったけどちょっと予想外な終わりでした。若干ファンタジーで楽しく読めましたよ!
スノーホワイト
「真実を映し出す鏡」をもつ反則の名探偵・襟音ママエは、舞い込む事件の真相は分かるが、推理は大の苦手。ある事件が縁で顔を合わせた探偵・三途川理が、窮地に陥れようと策を練っていることも知らず―。(講談社文庫より引用)
極悪非道でゲスすぎる、でも憎めない探偵『三途川 理』、真実を映し出す鏡を持つお付きの小人とともに異世界からやってきた中学生探偵『ママエ』を窮地に陥れようとする三途川との攻防戦が楽しすぎます!鏡が最強すぎた感はありますが…。
教場
希望に燃え、警察学校初任科第九十八期短期過程に入校した生徒たち。彼らを待ち受けていたのは、冷厳な白髪教官・風間公親だった。半年にわたり続く過酷な訓練と授業、厳格な規律、外出不可という環境のなかで、わずかなミスもすべて見抜いてしまう風間に睨まれれば最後、即日退校という結果が待っている。必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩。それが、警察学校だ。(小学館文庫より引用)
警察学校の生徒達が挫折を乗り越えて精神的に強くなって行く過程を描く短編もの、緊張感溢れるストーリーです。種明かしの後の嫌ーな後味を楽しむタイプの小説でこういうミステリーもいいなと思いました。
がん消滅の罠
治るはずのないがんは、なぜ消滅したのか―余命半年の宣告を受けたがん患者が、生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、病巣がきれいに消え去ってしまう。連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む医療本格ミステリー!(宝島社より引用)
2017年『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作、余命6ヶ月のガン患者が保険金をもらった後にガンが消えてしまった…その謎を解くため医師と保険会社の社員とが奮闘するお話。ラストの急な展開には驚くばかりでした。
【参考:anpo39さんのレビュー】
占星術殺人事件
密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?(講談社文庫より引用)
言わずと知れた名作、事件のトリック・真相はわかってみれば、とてもシンプルなのにそれらを恐ろしく複雑怪奇な物語に仕立て上げる手腕はさすがとしか言いようがありません。
天使のナイフ
生後五ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ三人は、十三歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。四年後、犯人の一人が殺され、檜山貴志は疑惑の人となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、江戸川乱歩賞受賞作。(講談社文庫より引用)
少年犯罪加害者と被害者のお話で、どちらからの立場からもその視点に立って深く考えさせられる作品です。読み進めるにつれて単純な事件が全く別の容貌にどんどん変わっていく様が気になって一気読みでした!
生ける屍の死
ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った。この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか。自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか。 (東京創元社より引用)
タイトルから受けるイメージと違って実はコミカルミステリー、死者が蘇るという世界観ながら、ファンタジーではなくガチガチの本格物、なぜ殺す意味があるのか?が重要なテーマになっています。次々に起こる殺人事件と次々に生き返る被害者たち!中々お目にかかれない推理小説です。
火車
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。(新潮文庫より引用)
20年近く前の作品なので時代背景はちょっと古いのですが、本当に面白かったです。クレジットカード社会の闇をミステリーによってうまく浮き彫りにしている重厚なミステリー作品。全ての辻褄が合ってスッキリする感じで素晴らしいです。
スマホを落としただけなのに
麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され…。(宝島社より引用)
個人情報の詰まったスマホを落とすということがいかに恐ろしい事なのかわかるお話。あの手この手で迫ってくる犯人、現実味があるだけにホラーより怖い…背筋が寒くなりました。
慈雨
警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件に酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に―。元警察官が真実を追う、慟哭のミステリー。 (集英社より引用)
元刑事が妻と四国巡礼をしながら過去の苦悩と向き合っていくお話。頑固で無口な元刑事の姿は、まさに『漢』で泣かせてくれますし、お遍路の情景や雰囲気、四国の人たちの温かさなどが他の警察小説とは一味違う空気を作っています。テーマが重くて、とても読み応えのある物語。
私が殺した少女
まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵沢崎の事務所に電話をしてきた依頼人は、面会場所に目白の自宅を指定していた。沢崎はブルーバードを走らせ、依頼人の邸宅へ向かう。だが、そこで彼は、自分が思いもかけぬ誘拐事件に巻き込まれていることを知る…。(早川書房より引用)
傑作と評されていることに納得のハードボイルド小説、昭和の香りが漂う大都会でやられたらやり返す探偵の姿や、続々登場する強面の人たち、誘拐事件の謎、好き嫌いは出ると思いますが、ハマる人には堪らない作品だと思います!あと、タバコをどこでも吸いすぎ!
涙香迷宮
明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのはIQ208の天才囲碁棋士・牧場智久!いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作る日本語の技巧と遊戯性を極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。(講談社文庫より引用)
このミスやら本ミス大賞などの賞をかっさらっていった『涙香迷宮』、トリックの解明はほぼ蚊帳の外になっていますが、50首もの『いろは歌』が凄いし、いろは歌に隠された暗号も面白い、暗号ミステリ物がこんなに面白いとは!そして日本語の美しさも味わうことが出来ますよ!
罪の声
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった―。(講談社文庫より引用)
昔あったグリコ森永事件の史実に基づいてのフィクション、キツネ目の男の真相や警察の内部の事、本当にこうだったのでは?と思わせる内容で、読み応え抜群!とても面白かったです。
おやすみ人面瘡
全身に“脳瘤”と呼ばれる“顔”が発症する奇病“人瘤病”が蔓延した日本。人瘤病患者は「間引かれる人」を意味する「人間」という蔑称で呼ばれ、その処遇は日本全土で大きな問題となっていた。そんな中、かつて人瘤病の感染爆発があった海晴市で殺人事件が起きる。墓地の管理施設で人瘤病患者の顔が潰され、地下室では少女が全身を殴打され殺されていたのだ。容疑者は4人の中学生。さらに、事件の真相を見抜いた男は、逆上した容疑者のひとりに突き飛ばされ、机の角で頭を打って死亡してしまった……かと思いきや、死んだはずの探偵の身体に発症した、いくつもの“顔”が喋り始め――。(角川書店より引用)
2017『このミス』『本ミス』ともにベストテンに入っている作品、読む度ドン引き白井さん。体中に『顔』が発症する奇病が蔓延しているという特殊な世界観のグロミステリー。万人にはおすすめ出来ないかも…。
黒祠の島
「そう―ここは黒祠なのですよ」近代国家が存在を許さなかった“邪教”が伝わる、夜叉島。式部剛は失踪した作家・葛木志保の姿を追い求め、その地に足を踏み入れた。だが余所者を忌み嫌う住民は口を閉ざし、調査を妨害するのだった。惨事の名残を留める廃屋。神域で磔にされていた女。島は、死の匂いに満ちていた。闇を統べるのは何者なのか?式部が最後に辿り着いた真実とは。(新潮文庫より引用)
因習が残る閉ざされた島×民俗学×ミステリ×ホラー作品でお好きな方にはたまらないと思います。登場人物が多くて混乱しかけますが、とにかく続きが気になってずんずん読んでしまいます。ドンヨリじめっとした印象の作品です(褒めてます)。
オイディプス症候群
中央アフリカで発見された奇病。その奇病に冒されたウイルス学者である友人に頼まれ、ナディア・モガールと矢吹駆は、アテネに向かう。目的は、ある資料を友人の師・マドック博士に届けるためだったが、博士は、なぜかアテネを離れ、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島」に渡っていた…。(光文社文庫より引用)
孤島にある豪奢な館が舞台のクローズドサークル作品、全編に散りばめられたギリシャ神話や哲学的な内容が多くを占めていて読みづらさもありましたが、ミステリーとしては魅力的な作品です。
葉桜の季節に君を想うということ
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。(文春文庫より引用)
世の中に横行する悪徳商法がテーマの作品、冒頭の表現によるイメージの植え付けが見事などんでん返しミステリー、180度印象の変わる逆転の鮮やかさはトップクラスだと思います。
螢
オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。(幻冬舎より引用)
過去に一人の音楽家が発狂、八重奏団のメンバーを惨殺したいわく付きの館『ファイアフライ館』に集まったオカルト研究のサークルメンバー内で起こった殺人。広大な敷地の暗鬱な館、そこに閉じ込められた学生たち…王道的なクローズドサークルもの、作者による大きな仕掛けでダブルパンチをうける作品です。
扉は閉ざされたまま
大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。(祥伝社より引用)
石持浅海さんの倒叙ミステリー3部作の第1弾です。大学の同窓会で成城の館に集まった7人の旧友たち、そこで起こった密室殺人。頭脳明晰かつ冷静な『碓氷優佳』と犯人との息詰まる頭脳戦が繰り広げられます。犯人視点で進むのでどうしても犯人側の気持ちで読んでしまいます。鋭い感覚で人から見聞きした情報のみでじりじり迫ってくる優佳が怖い。
シャドウ
人は、死んだらどうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?(東京創元社より引用)
大学病院の職員とその家族にまつわる事件の話。どんでん返しを食らうミステリーとしても勿論ですが、それ以上に2つの家族の物語に引き込まれて一気に読み終えてしまいました。全体としては爽やかな印象が残る作品です。
密室キングダム
昭和最後の夏に、札幌で起きた密室連続殺人事件。それは、伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が発端だった。吝家を覆う殺意の霧の中に浮かぶ忌まわしき宿縁―。妖艶にして華麗、絢爛という言葉さえ似合う不可能犯罪の連鎖に、若き推理の天才・南美希風が挑む。(光文社文庫より引用)
マジシャンの屋敷を舞台に5つの密室が次々と襲いかかります。タイトル通りこれでもかと言わんばかりの密室殺人。密室モノ好きさんには全力でオススメ!1240ページの長編ですが人物紹介などが本編前についていないので、時間を置かずに読み切らないと誰が誰だかわからなくなりますよ。
インシテミル
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。(文春文庫より引用)
高額バイトに惹かれた者同士が集められて行われる密室での殺人ミステリー。一人二人と惨たらしい被害者が発生するなかで冷静でいられなくなっていく様子がリアルで怖い、人の本性が表れていくので面白いですよ!
完全恋愛
第二次大戦末期の福島県の温泉地、東京からやってきた少年・本庄究は、同じく戦火を逃れてこの地に暮らしていた画家の娘・小仏朋音に強い恋心を抱く。やがて終戦となり、この地方で進駐軍のアメリカ兵が殺されるという事件が起こる。しかし現場からは凶器が忽然と消えてしまう。昭和四十三年、福島の山村にあるはずのナイフが、時空を超え、瞬時にして西表島にいる少女の胸に突き刺さる。昭和六十二年、東京にいるはずの犯人が福島にも現れる。三つの謎の事件を結ぶのは、画壇の巨匠である男の秘められた恋であった。(小学館文庫より引用)
内容は一途な男性の恋を軸に、殺人事件が起こって…彼が亡くなる頃、解明というお話。激動の時代を生きた主人公たちの家族愛・恋愛で心温まる物語です。ミステリーであると同時に静かで濃い恋愛小説です。
Another
奇妙な「二人だけの孤独と自由」を過ごす中で、恒一と鳴、二人の距離は徐々に縮まっていく。第二図書室の司書・千曳の協力を得つつ、“現象”の謎を探りはじめるが、核心に迫ることができないままに残酷な“死”の連鎖はつづく…。夏休みに入ったある日、発見させる一本の古いカセットテープ。そこに記録されていた恐ろしき事実とは!?(角川文庫より引用)
主人公が転校してきた学校で起こる、ある怪奇現象を解決するまでのお話。 ヒロインのキャラクターが魅力的で大分不思議な女の子『三崎鳴』。物語は主人公『恒一』と彼女の2人を中心に進んでいきます。ミステリーとホラーの二重構造で行ったり来たりする感覚のとても面白い作品です!
夏の王国で目覚めない
父が再婚し、新しい家族になじめない高校生の美咲。だから、幻想的なミステリ作家、三島加深のファンサイトで加深が好きな仲間を知ったことは大きな喜びだった。だが“ジョーカー”という人物から【架空遊戯】に誘われ、すべてが一変した。役を演じながらミステリツアーに参加し、劇中の謎を解けば、加深の未発表作がもらえる。集まったのは7人の参加者。しかし架空のはずの推理劇で次々と人が消え…。(早川書房より引用)
ミステリーツアー参加中に実際の事件に巻き込まれていくお話。登場人物みんなが特定の作家にのめり込んでいるという設定にちょっと狂気さえ感じてしまいましたが、予想以上に爽やかで青春的な最後になるのは驚きました。
密室蒐集家
鍵のかかった教室から消え失せた射殺犯、警察監視下の家で発見された男女の死体、誰もいない部屋から落下する女。名探偵・密室蒐集家の鮮やかな論理が密室の扉を開く。これぞ本格ミステリの醍醐味!物理トリック、心理トリック、二度読み必至の大技…あの手この手で読者をだます本格ミステリ!(文春文庫より引用)
5つの短編集です。密室殺人が発生し、密室蒐集家と名のる探偵役が現れて密室の謎を解いていく流れはどれも同じですが、密室の種類から事件の内容まで様々でどれも面白い!蒐集家のキャラは弱く、シンプルな謎解きミステリーに徹しています。
衣更月家の一族
別居している妻の潜伏先を察知した男が、応対に出た姉のほうを撲殺―一一〇番通報の時点では単純な事件と思われた。だが犯行が直接目撃されていないうえ、被害者の夫には別の家庭があった。強欲と憤怒に目がくらんだ人間たちが堕ちていく凄まじい罪の地獄。因業に満ちた世界を描ききった傑作ミステリー。(講談社文庫より引用)
3つの一見関係なさそうに思える事件が実は繋がっていたというお話。どんな形で一つの物語として結実するのか楽しみながら読み進めることが出来ます。ただ家系図が出てきて整理してくれるからなんとか理解できますけど、人間関係がなかなかややこしい…。
水族館の殺人
夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。な、なんとサメが飼育員に喰いついている!駆けつけた神奈川県警の仙堂と袴田が関係者に事情聴取していくと、すべての容疑者に強固なアリバイが…。仙堂と袴田は、仕方なく柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。(東京創元社より引用)
新聞部『向坂香織』らが取材に訪れた水族館で飼育員がサメに喰われるというショッキングな殺人が発生し…『裏染天馬』が超絶推理とオタクな検証で事件の真相に迫るというお話。シリーズものですので前作の『体育館の殺人』を読んでおくとより楽しめます。もちろん謎の解明はびっくりするものですよ!
あとがき
いかがでしたか?おすすめのミステリー小説をご紹介してきました。
どの作品もドキドキハラハラの展開が楽しめるミステリー小説ばかりとなっていますので気になる作品が見つかれば是非一度手に取ってみて下さいね。